令和3年1月24日
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セイコーの創業者、服部金太郎の若い頃の逸話です。金太郎が奉公していた商店が破産しかかった。すると、金太郎は自分の預金を全部、主人の前に差し出して言ったという。「これはお店からいただいた給金の残りですから、自分で勝手に使ってはいけないと思い、貯めていたものです。それがお店のお役に立てて頂けるなら、この上の喜びはありません」。
この心のありようには気高いものさえ覚える。この気高さが金太郎に人生を大きく発展させた礎になったことは確かである。
京セラの創業者稲盛和夫が一貫して説いてこられたのも、「心を高めない限り、経営は伸びない」ということである。
その哲学は「才能を私物化してはならない」という一語に顕著である。
才能は天から与えられたものだから公のために使うべきで、私のために使ってはならないというのである。稲盛哲学の真骨頂である。心をその高みに置くことで、氏は今日の偉業を果たしたのだ。
心のありようがいかに大きな人生の差異となるか。そのことを肝に銘じ、自らの心を高め、運命を伸ばしたいものである。
『致知』編集長 藤尾秀昭
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