令和6年5月11日

お客様、ありがとうございます。

六月に亡くなった夫の母の、退院できたらやりたいことリストNO1は、「美容院に行く」だった。三月にようやく退院し、酸素チューブをつけて家で過ごすようになった時、まず探したのは美容院。酸素ボンベ付きのお客は歓迎されないかも知れないし、何しろ母はヘアスタイルにかなりうるさい。切ればいいというわけでは無い。

幸いようやく見つけた予約制のお店を、母はとても気に入ってくれた。快く引き受けてくれた上、家で普段洗えないことを配慮した入念なシャンプー、手際よいカット。何より母を喜ばせたのは、必要以上に病人扱いせず、好みをよく聞いてくれたこと。「ええカットやろ?」と知人に自慢する母の輝いた顔。歩くと苦しくなるようになってからは、車椅子に一日中ただじって座って息苦しさに耐える。そんな日々の中でも、母は美容院通いを楽しんだ。仰向けのシャンプーがつらくなった時は、あれこれ楽な姿勢を工夫してくれた美容師さん。母はカットしたての爽やかな姿で旅立ちました。最後に母がくれた言葉をお裾分けします。

「世話になったね。ありがとう」。明日は母の日。

                  「涙が出るほどいい話」福岡 宮脇明美

本日のご来店心よりお待ちいたしております。

                                   合掌 令和六年五月十一日

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