令和6年3月23日
お客様、ありがとうございます。
昭和時代、宮本武蔵や新平家物語で一世を風靡した小説家、大衆文学王の吉川英治さんの話。
「逆境の時代に僕はいろんなこと、例えば船腹の垢落としから、行商、印刷屋からいろいろやったんだけどね、不景気の時なのですぐに放り出された。そのつど新しい職を自分で探さなければならなかったんだ。
ようやく面接先が見つかったと思うと、事業主が履歴書を見せろと言うんだ。私はおっかなびっくり履歴書を見せるのです。すると事業主が、僕の履歴書を見て、嘲りの顔で僕を見るんだ。あの時のことを思い出すとゾッとするよ。私の履歴書はね、二行で済んだんだ。第一行、小学校中退、第二行、賞罰なし。天にも地にもこれきりの履歴だ。だから、相手がフフンと鼻で笑う。
学問がないというのは恥ずかしいことで、その頃の私は「他山の石」と「路傍の石」の区別がつかなかった。「僕は他山の石だ」と言ったら笑われたよ。本当に恥をかいた。これが発憤の元だった。
それからと言うもの印刷屋にいたので百科事典を五十回読んだよ。」彼はすごい努力家だったのです。
「努力に勝る天才無し」ということでしょう。
本日のご来店心よりお待ち致しております。
合掌
令和六年三月二十三日